株式会社BCPJAPANはISO規格の申請・運用はしませんが、一緒に読み解いてみましょう
現代の不確実なビジネス環境において、多くの経営層は自社の「脆さ」を自覚しています。しかし、現状のリーダーシップの多くは、場当たり的なリアクティブ(反応的)な戦術と、真の戦略的レジリエンスの間にある深い溝を埋められずにいます。
2024年10月に発行された最新の国際規格「ISO 22336:2024」は、レジリエンスを単なる「守りの能力」としてではなく、組織の根幹をなす「戦略的デザイン」として再定義しました。本記事では、組織レジリエンスの専門家としての視点から、この新規格が提示する4つの核心的な洞察を解き明かします。
1. 「実行」の前に「方針と戦略」を固める重要性
多くの組織が陥る罠は、具体的な実行能力(実務レベルの対策)の構築を急ぐあまり、その拠り所となる設計図を疎かにすることです。ISO 22336:2024は、この「戦略と実行の乖離(ストラテジー・エグゼキューション・ギャップ)」を埋めるためのガイドラインです。
この規格はレジリエンス能力そのものの開発ではなく、あくまで「方針(Policy)と戦略(Strategy)のデザインおよび策定(design and development)」に特化しています。レジリエンスとは、偶発的な努力によって生まれるものではなく、意図的なアーキテクチャ(設計)の産物であるべきだからです。なぜその取り組みが必要なのかという「方針」と、いかに目標を達成するかという「戦略」が欠如した状態での投資は、リソースの浪費に他なりません。
実効性のあるレジリエンスは、強固な方針と戦略という設計図からのみ生まれる。(設計図がなければ現場は作れない)
2. 業界を問わない「汎用性」と「ライフサイクル」への適合
「レジリエンスは製造業や重要インフラのためのもの」という考えは、もはや時代遅れです。この規格は、特定の業界に依存しない普遍的なフレームワークを提供しています。
“This document is applicable to organizations seeking to enhance resilience. It is not specific to any industry or sector. It can be applied throughout the life of an organization to enhance resilience.” (この文書は、レジリエンスの強化を求めるあらゆる組織に適用可能です。特定の業界やセクターに限定されるものではありません。また、組織の全ライフサイクルを通じて、レジリエンスを高めるために適用できます。)
スタートアップの急成長期から成熟企業の変革期まで、組織のライフサイクルのどの段階においても、不測の事態を成長の機会に変えるための指針として活用できるのがこの規格の真価です。
3. 優先順位の決定:限られたリソースをどこに投じるか
危機に直面した際の「すべてを一度に守る」という全方位的な対応は、リソース(人・モノ・金・情報・時間・知財)を分散させ、結果として組織を共倒れに追い込みます。ISO 22336:2024は、レジリエンス・イニシアチブの実装における「優先順位の決定方法」を論理的に提示しています。
ここで鍵となるのが、単なる「調整(coordinated)」だけでなく「協力的(cooperative)」な能力の構築です。戦略が明確になることで、各部門が自律的に動きながらも、組織全体のレジリエンス向上という共通目的のために連携する土壌が整います。一貫した戦略は、縦割り組織の弊害を打破し、限られたリソースを最もクリティカルな領域へ集中させるための「強制力」として機能するのです。
4. 社会的インパクト:レジリエンスが貢献するSDGs
組織のレジリエンス強化は、自己防衛の域を超え、社会全体の安定に寄与する公的な価値を持ちます。ISO 22336:2024は、以下の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を明示しています。
- 目標3:すべての人に健康と福祉を 組織が安定することで、危機下においても従業員の雇用と心身の健康を維持し続けることが可能になります。
- 目標10:人や国の不平等をなくそう 強靭な戦略は、組織の機能不全が招く「最も脆弱なステークホルダーへのしわ寄せ」を未然に防ぎます。
- 目標11:住み続けられるまちづくりを 地域の主要な組織がレジリエントであることは、地域コミュニティ全体の復元力を支える重要なインフラとなります。
- 目標13:気候変動に具体的な対策を 気候変動に伴う物理的・移行リスクに対し、場当たり的ではない長期的な適応戦略を構築できます。
- 目標16:平和と公正をすべての人に 組織の強靭さは、危機の連鎖による社会制度の「空洞化」を防ぎ、法の支配と社会的な公正を維持する基盤となります。
結論:未来に向けた問いかけ
ISO 22336:2024は、経営層に対し「レジリエンスを経営戦略そのものとして強くデザインせよ」というメッセージを投げかけています。これは、不確実な未来に対する知的で強力な回答です。
不測の事態を乗り越えるための現場の「実行能力」は重要です。しかし、それを支え、導き、統合するための「方針とデザイン」が、現場が動ける真に強い組織へ変革していきます。
株式会社BCPJAPANが提唱する3SK(整理整頓清掃・危機管理)は、トップダウンとボトムアップと業務間連系を成し遂げるシステムです。



