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株式会社BCPJAPAN 代表取締役 山口泰信
外国人スタッフを採用する工場や飲食店が増えるなか、企業には、日常業務の教育だけでなく、地震・津波・台風・豪雨・火災などが発生したときに、外国人スタッフの命を守る体制づくりが求められています。
日本人向けの防災マニュアルを翻訳するだけでは、十分な対策とはいえません。
災害時には、難しい日本語を読む余裕がなくなります。さらに、母国で地震や津波を経験したことがないスタッフは、「机の下に入る」「津波警報が出たら高い場所へ移動する」「警報が解除されるまで戻らない」といった、日本では基本とされる行動を知らない場合があります。
外国人スタッフを雇用する企業のBCPでは、次の3点を一体として考えることが重要です。
災害時の指示は、長い文章では伝わりません。
例えば、次のような短い文章を、「やさしい日本語」、スタッフの母国語、ピクトグラムで準備します。
日本語能力が高い外国人スタッフを通訳担当にするだけでは不十分です。その人が休み、負傷、夜勤明けなどで不在になる可能性があるため、担当者と代理担当者を決めておく必要があります。
翻訳アプリも便利ですが、停電、通信障害、スマートフォンの故障を想定し、紙の行動カードやピクトグラムも併用します。

ニュースだけでなく、日本での生活、防災、学校、日本語学習などの情報を多言語で確認できます。地震・津波などの災害情報や、防災に関するQ&Aも掲載されています。言語によって利用できる情報は異なりますが、外国人スタッフが平常時から日本の防災を学ぶ入口として有効です。
会社の休憩室、社員寮、食堂などにQRコードを掲示し、入社時にアクセス方法を説明しておきましょう。
気象庁では、日本語を含む15言語で、天気、大雨、高温、地震、津波、火山などに関する情報を提供しています。英語、中国語、韓国語、ベトナム語、インドネシア語、タガログ語、ネパール語、ミャンマー語など、外国人雇用の現場で利用機会の多い言語に対応しています。

工場や飲食店では、責任者だけが天気予報を確認するのではなく、外国人スタッフ本人も、自分の言語で警報や台風情報を確認できるようにします。
「Safety tips」は、緊急地震速報、津波警報、気象警報などをプッシュ通知するアプリです。日本語、英語、韓国語、中国語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、インドネシア語、タガログ語、ネパール語、クメール語、ミャンマー語、モンゴル語などに対応しています。
避難行動を確認するフローチャート、周囲の日本人と情報交換するための会話文、災害時に役立つウェブサイトへのリンクも用意されており、訪日旅行者だけでなく、日本で生活する外国人にも役立つ機能があります。
入社時のオリエンテーションで、次の設定まで一緒に確認することが大切です。

外国人が災害情報を入手するためのアプリやウェブサイトが、多言語のリーフレットに整理されています。印刷して工場、店舗、事務所、社員寮などに掲示できます。
洪水、土砂災害、高潮、津波などのリスクを地図上で確認できます。自治体が作成したハザードマップも検索できます。勤務先だけでなく、社員寮、通勤経路、送迎ルートの危険箇所を確認してください。

避難所などで使用できる多言語指さしボード、避難者登録カード、災害情報の文例、食物アレルギーや食事制限を示す「FOODPICT」などが公開されています。
会社独自の資料を一から作るのではなく、公的機関の資料を現場に合わせて活用する方法も有効です。

防災だけでなく、仕事、住居、医療、税金、社会保険、日常生活のルールなど、外国人が日本で生活するための情報が掲載されています。「生活・就労ガイドブック」や、やさしい日本語版も利用できます。

話しかけた内容を外国語に翻訳する無料の音声翻訳アプリで、33言語に対応しています。緊急時の補助ツールとして役立ちますが、研究用アプリであり、通信状況や翻訳精度にも左右されるため、重要な避難指示をアプリだけに依存してはいけません。
工場では、地震や火災が発生した際、避難する前に機械や設備を停止させなければならないケースがあります。
しかし、すべてのスタッフが自己判断で停止操作をすると、かえって事故につながる可能性があります。
設備ごとに、次の内容を多言語またはピクトグラムで明確にします。
外国人スタッフが複数の派遣会社や登録支援機関から勤務している場合は、所属会社との連絡方法もBCPに組み込みます。
「会社が確認する」「派遣会社が確認する」と、役割が曖昧な状態を残してはいけません。
飲食店では、従業員だけでなく、お客様の避難誘導も必要です。
外国人スタッフが厨房にいる場合は、地震発生時にフライヤー、ガス、包丁、熱湯、食器棚などからどのように身を守るか、実際の厨房で訓練します。
また、次のような事業継続上の課題もあります。
「EXIT」「EVACUATION AREA」などの表示に加え、矢印や避難ピクトグラムを使用すると、言語に依存せず誘導しやすくなります。
ムスリムのスタッフを雇用する場合、ハラル対応を「豚肉を出さなければよい」と考えてはいけません。
一般的には、豚肉や豚由来成分、アルコール、原材料、調理工程、保管、調理器具、油、食器などへの配慮が必要です。ハラル食材が、ハラルではない食材と接触しないようにする管理も重要です。
調理器具や保管容器を色分けする方法は分かりやすい一方、色だけに頼るのは危険です。
例えば、社内で「緑色はハラル用」と決めても、新しく入ったスタッフや応援スタッフには意味が伝わりません。また、色覚の違いや、照明が消えた災害時には識別しにくくなります。
色分けをする場合は、必ず次の表示を併用します。
ハラルに対する考え方や実践方法には個人差があります。会社側だけで判断せず、本人に確認し、必要に応じて専門団体や認証機関に相談してください。
災害備蓄についても、全員に同じ非常食を渡せばよいわけではありません。
ハラル、食物アレルギー、ベジタリアン、宗教上の食事制限、持病などを事前に確認し、本人が食べられる備蓄品を準備します。ただし、宗教や病歴は慎重に扱うべき個人情報です。目的を説明し、本人の同意を得たうえで、閲覧できる担当者を限定することが必要です。
外国人スタッフが社員寮や借り上げ住宅で集団生活をしている場合、会社の防災対策は勤務時間だけでは完結しません。
集団生活には、互いに助け合える強みがある一方で、火災、感染症、生活ルールの違い、情報の偏りといったリスクがあります。
社員寮では、次の項目を明確にします。
グループチャットだけに連絡手段を限定するのも危険です。スマートフォンを持ち出せない、充電が切れる、通信障害が起きる可能性があります。
連絡網、紙の掲示、集合場所、安否確認担当者を組み合わせ、情報伝達手段を複数用意します。
日本人管理者だけで防災計画を作り、外国人スタッフに説明するだけでは、現場で本当に機能するか分かりません。
防災訓練では、外国人スタッフにも次の点を確認してもらいます。
「分かりましたか」と聞くと、遠慮して「分かりました」と答える人もいます。
実際に操作してもらう、避難経路を歩いてもらう、自分の言葉で説明してもらうことで、理解度を確認します。
BCPというと、設備、データ、取引先、資金などの対策が中心になりがちです。
しかし、外国人スタッフを雇用する工場や飲食店では、生活、宗教、言語、社員寮、家族との連絡まで含めて考える必要があります。
まずは、次の5つから始めてください。
防災情報を多言語で伝えることは、外国人スタッフだけのための特別対応ではありません。
誰にでも分かりやすい指示、見やすい表示、明確な役割分担を整えることは、日本人スタッフを含めた職場全体の安全性を高め、災害後の早期復旧にもつながります。
株式会社BCPJAPANでは、代表取締役の山口泰信が講師として、外国人スタッフを雇用する工場・飲食店などを対象に、現場の状況に合わせた防災・BCP研修、社員寮を含めたリスク確認、外国人スタッフ参加型訓練、分かりやすい防災マニュアルづくりを支援します。
外国人スタッフと企業、そして地域を守るために、「伝えたつもり」ではなく、「行動できる防災・BCP」を整えていきましょう。
※アプリの対応言語、対応OS、掲載内容、URLなどは変更される場合があります。導入・研修時には、各公式サイトの最新情報をご確認ください。